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西日本豪雨災害における介護施設としてのボランティア

平成26年7月に広島で起きた土砂災害で、当時勤務していた施設は土砂災害が起きた地域から最寄りの介護施設でした。その時の経験は今もサカグループに受け継がれています。どんな経験だったかをお伝えします。

その日はあまりにも強い雨で朝から公共交通機関がストップしていたと記憶しています。職員の駐車場が浸水し、夜勤者が止めていた車は廃車になりました。なんとか朝出勤し、その日の予定を確認すると今日からショートステイを利用される方がいたのです。しかも安佐南区緑井の少し山を登った所にご自宅がある利用者様です。道路が寸断されているところも多いなかで、まずはその方のご自宅まで歩いて行って車が通れるかどうかを確認してから施設に戻り、その後上司と2人がかりで迎えに行きました。

100名近くの入居者のご家族様のなかには遠方で心配されている方もいらっしゃいました。事務所のメンバーでご家族様全員に手分けして連絡し、さいわい当施設は少しの停電だけで済んだことをお伝えしました。しかし近隣地区は記憶に残る甚大な被害で、なんとか無事であった地域住民も近くの小学校や公民館に避難されていました。

自分たちに何ができるかを考えた結果、まず施設のお風呂を無料で開放することになったのです。施設の入居者様は午前中に入浴されるので、お風呂が空く昼頃から夜の12時まで開放しました。解放といっても入浴したい方が一気に押し寄せるのは良くないとのことで、一家族ごとに8か所あるお風呂を順番制で提供しました。お一人で来られた方にもお一人だけで入浴していていただきました。ロビーは順番を待つ地域の方であふれましたが、「気持ちよかったです」「ありがとうございます」と感謝の言葉をたくさんいただきました。お風呂の無料開放は4ヵ月ほど続け、炊き出しを行った日もありました。

真っ先にボランティア活動を行ったのが当施設だったそうです。テレビの取材も何社も来られ、メディアの方からの電話も受けました。お風呂に入りに来る方のために、近くの小学校から施設までの送迎も交代で行いました。一家族ごとに入られたお風呂は必ず掃除をして、新しいお湯を入れて提供しました。その掃除当番を職員が総出で交代しながら行ったことが今でも忘れられません。

うれしかったことは、当時お風呂によく入りに来られた地域住民の方とその後、道でバッタリ出会ったら必ず「あの時はありがとうございました」と笑顔で話ができたことです。安佐南区の居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんからは「見て見ぬふりをせずどこよりも早く手を挙げてくれてありがとう」と言われました。平成30年7月の豪雨の時は、今度はサカグループが安佐北区口田や深川のボランティアに出て行きました。私たちは今もいろんな思いを抱えながら住んでいる方がいることを知っています。あの時のボランティア活動を風化させないように、いろんな形で伝えていければいいなと思います。